それでは下記フローの2.1項~2.2項について説明します。
相続フロー
2.1遺産・債務調査
亡くなった方の預貯金、不動産、株式等の資産と借用書、債務保証書、連帯保証/債務契約書等の債務の両方を確認する必要があります。
これらは例えば戸籍謄本や住民票のように市町村役場等に情報が一括して保管されていればいいのですが現実はそのようになっておらず、例えば預貯金の場合は故人が持っていた銀行通帳やカード、不動産の場合は登記簿謄本、債務関係では債務保証書や連帯保証、連帯債務契約書の書類が自宅にないかを故人の部屋や生前の友人などに確認する必要があります。
このように遺産・債務調査はご遺族の方の協力が必要な場面となります。
2.2相続方法の選択
相続人は、被相続人の死亡を知った日から3ヶ月以内に以下のいずれかを決めなければなりません。
相続方法の決定
(1)単純承認
財産及び借金(保証人等含む)を含め、全て相続する際に選択します。
なお、3ヶ月以内に相続方法を決めないと自動的に単純承認として決定します。これは注意が必要です。すなわち亡くなった方が借金>財産の場合も単純承認の場合はそのまま相続してしまいます。つまり亡くなった方の借金を相続人で支払わなければなりません。
(2)相続放棄
財産及び借金(保証人等含む)を全く相続しない場合に選択します。相続人が複数いても各々各自で放棄可能です。
(3)限定承認
相続財産の範囲内で借金も相続します。つまり、借金>相続財産の際は相続財産を超える借金は相続しません。
ただし相続人全員の同意が必要で、また債権者と調 整が必要となること及び士業への依頼費用が高額になります。
なお、相続放棄と限定承認は相続の開始を知った時から3ヶ月以内に故人の最後の住所を管轄する家庭裁判所に対して申述(しんじゅつ)手続きをする必要があります。
上記3ヶ月以内に決めきれない場合、伸長の申立てを行えば期間を延長することができます。(通常1~3ヶ月伸長)
更に限定承認の場合は相続財産目録の提出が必要です。
【参考】債権者の支払い要求について
債権者から支払い要求が来て、その請求通りに相続財産から少額でも借金の支払いをすると、 民法921条1項の「相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき」 に示すように、財産も借金も相続(単純承認)になる可能性があります。
相続放棄や限定承認をする場合は債権者からの連絡で請求されても、支払ったり支払いの交渉や約束をせず「相続放棄/限定承認を検討しており払えません」と断りましょう。
なお家庭裁判所より「相続放棄/限定承認申述受理通知書」を受領後は債権者にそれを見せれば請求はストップします。
また故人のアパートの家賃支払いやその解約手続き、故人の預金引き出しや名義変や解約等も、単純承認となる可能性がありしてはいけません。
やむを得ず大家さんに支払うのであれば、相続人以外の方から支払うようにしましょう。
債権者は、法定相続にのっとり相続人を探して支払いを求めます。相続放棄や限定承認をする場合は、相続人の第1順位~第3順位までの方にあらかじめ「支払えない旨」をするよう確実に連絡しましょう。
なお、サラ金は保証人不要の旨を掲げていますが故人がサラ金を借りていた場合、相続人に連絡がいく可能性があります。